製造業のWEBサイトリニューアルで失敗する手順とは?

製造業のWEBサイトリニューアルで、実は非常に多い失敗パターンがあります。それが、

  • とりあえずコンペを行う
  • 提案デザインで決める

という流れです。一見合理的に見えます。しかし、複数社から提案をもらい良いデザインを選ぶというこの進め方は、高い確率で「きれいだが成果が出ないサイト」を生みます。

なぜ「コンペ → デザイン決定」は危険なのか

1.判断基準が“見た目”になる

WEBサイトのリニューアルをコンペ形式で進めると、評価の軸はどうしても「第一印象」に引っ張られます。提案書が並び、限られた時間の中で比較検討を行うと、人は視覚的なインパクトに強く反応します。

  • トップページが洗練されているか。
  • 動画が入っていて今風に見えるか。
  • アニメーションが動き、先進的に感じるか。

こうした要素は確かに重要です。企業の印象を左右する以上、デザインが軽視されるべきではありません。しかし問題は、それが判断基準の中心になってしまうことです。製造業のWEBサイトにおいて本当に問われるべきなのは、見た目の派手さではありません。

  • 技術力や独自性が、構造としてきちんと伝わる設計になっているか。
  • 検討者が他社と比較しやすい情報整理がされているか。
  • 営業担当が商談の中で活用できる導線になっているか。

製造業の購買プロセスは、感覚ではなく「検証」と「比較」で進みます。検討者は、課題に対する適合性、導入実績、対応範囲、信頼性を冷静に見ています。その視点に応えられる構造がなければ、どれほど美しいデザインでも成果にはつながりません。

デザインはあくまで“結果”です。市場やターゲットを定め、強みを整理し、導線を設計した先に生まれるものがデザインです。戦略が曖昧なまま作られたデザインは、見栄えは良くても営業装置としては機能しません。コンペでデザインだけを比較して決めるという進め方は、知らず知らずのうちに「戦略を後回しにする意思決定」になってしまうのです。

製造業のWEBサイトは、作品ではなく営業資産です。だからこそ、評価の軸は“見た目”ではなく“構造と戦略”でなければなりません。

2. 戦略設計が抜け落ちる

コンペ形式でWEBサイトのリニューアルを進めると、もう一つ起こりやすいのが「戦略設計の不在」です。本来リニューアルにおいて最も時間をかけるべきなのは、デザインではありません。まず考えるべきは、

  • 誰に向けたサイトなのか?
  • どの市場を取りにいくのか?
  • 指名検索以外の流入をどう増やすのか?
  • 問い合わせ以外に、どんな中間CVを設計するのか?

といった、事業と直結する設計の議論です。しかし多くのコンペでは、この部分が十分に整理されないまま「トップページのデザイン案」が提示されます。つまり、戦略が固まっていない状態でいきなり“形”の提案が始まってしまうのです。

その結果どうなるか。自社の強みが言語化されないまま表面的に並び、メッセージが抽象的でぼやけ、「幅広く対応できます」という無難な表現に落ち着く。ターゲットも絞り切れず、「あらゆる業界に対応」「全国対応」「多様なニーズに応える」といった総花的な構成になりがちです。

一見すると網羅的で安心感のあるサイトに見えますが、実際には“誰のためのサイトなのか分からない”状態になります。製造業のWEBサイトは、営業戦略そのものを可視化したものです。市場の選択と集中がなければ、構造も導線も定まりません。戦略を固めずにデザインを決めるということは、完成形がわからないまま建物の外観だけを設計しているようなものです。見た目は整っていても、何のための建物なのかが定まっていなければ事業成果にはつながりません。だからこそ、リニューアルの成否は「デザイン力」ではなく「戦略設計にどれだけ時間を使ったか」で決まるのです。

3.社内の満足度は高いが、成果は出ない

コンペ型リニューアルの本当の怖さは、「失敗していることに気づきにくい」という点にあります。なぜなら、社内評価は高いからです。公開直後は、「前よりきれいになった」「今っぽくなった」「展示会でも見せやすい」といった前向きな声が上がります。プロジェクトに関わったメンバーの達成感もありますし、社内プレゼンでも通りやすい。表面的には“成功”に見えます。

しかし問題は、その半年後です。

  • 問い合わせが増えていない
  • 新規顧客が増えていない
  • アクセス数も大きくは変わらない

そして何より、

  • 営業がほとんど使っていない
  • 提案時にURLを送ることはあっても、商談の武器にはなっていない
  • 技術説明や比較資料として活用されていない
  • 案件化の後押しにもなっていない

これはまさに、“営業が使わないWebサイト”問題そのものです。Webサイトは本来、営業活動を支援する装置であるはずです。見込み客が事前に理解を深め、営業が説明の時間を短縮し、信頼形成を加速させるための仕組みです。それが機能していないということは、「デザインとしては成功、営業資産としては未完成」という状態です。

社内満足と市場成果は、必ずしも一致しません。むしろ、コンペ型で“見た目の改善”が目的化すると、評価軸は内向きになります。しかしWebサイトの評価者は、社内ではなく市場です。検討者が比較し、営業が使い、受注につながって初めて成功と言えます。

見た目の刷新で満足してしまうこと。これこそが、コンペ型リニューアルの最大の落とし穴なのです。

製造業のWebは“デザイン”ではなく“営業設計”

製造業のWebサイトは、単なる会社案内ではありません。パンフレットをWeb化したものでもなければ、ブランディングのためだけのツールでもありません。

本来の役割は、営業です。

営業担当が動いていない時間も、展示会がない期間も、24時間365日、見込み顧客と接点を持ち続ける存在。それが製造業のWebサイトです。だからこそ、設計の順番が重要になります。 まずやるべきことは、市場とターゲットの明確化です。

  • どの業界を取りにいくのか。
  • どの工程・どの課題を持つ企業を狙うのか。

ここが曖昧なままでは、メッセージも構造も定まりません。

次に行うのが、強みの再定義です。「品質が高い」「実績が豊富」といった抽象的な表現ではなく、

  • 競合と比較したときに何が違うのか。
  • どの工程で、どんな課題に対して、どう優位性があるのか。

これを言語化することが土台になります。 その上で、検索戦略を設計します。

  • 指名検索だけに頼るのか。
  • それとも非指名キーワードから新規市場を取りにいくのか。

流入経路を設計しなければ、サイトは“待ちの姿勢”のままです。 続いてコンテンツ設計。

  • 検討者が知りたい情報を、どの順番で、どの粒度で提示するのか。
  • 比較検討の材料をどう揃えるのか。

ここが営業支援機能の中核になります。 さらに導線設計。いきなり問い合わせだけを求めるのではなく、

  • 資料ダウンロードや事例閲覧などの中間CVをどう設計するか。
  • 営業が商談前に送れるページをどう作るか。

ここで初めて“営業装置”としての骨格が整います。

そして最後に、デザインです。デザインは重要です。しかしそれは、戦略と構造を“正しく伝えるための表現”にすぎません。順番を間違えると、見た目は整っているのに営業成果につながらないサイトになります。製造業のWebサイトは作品ではありません。営業設計の結晶です。だからこそ、デザインは最後なのです。

なぜ製造業ほど失敗しやすいのか

製造業は、本来とても強い業種です。技術力が高い。実績も豊富。現場力もあり、営業も粘り強い。長年の積み重ねで培われた競争力を持っています。それにもかかわらず、Webリニューアルで成果が出ないケースが多いのはなぜか。理由はシンプルです。「言語化」と「構造化」が弱いからです。

製造業の強みは、現場の中にあります。技術者の経験値、加工ノウハウ、対応力、改善力。それらは確かに価値がありますが、社内では“当たり前”になっています。そのため、

  • 自社の何が他社と違うのか
  • どの工程で選ばれているのか
  • どんな企業に刺さるのか誰が、どんな課題で見るのか

といった強みの再定義が行われないまま、サイト制作が進んでしまうのです。そして、見た目が整った瞬間に「やった感」が出る。トップページがきれいになり、写真が刷新され、動画も入り、デザインが洗練される。ここで社内の満足度は一気に上がります。しかし市場は、見た目で判断していません。検討者が見ているのは、

  • 比較できるか。
  • 導入イメージが湧くか。
  • 安心材料が揃っているか。

この3点です。

  • スペックは明確か
  • 対応範囲は具体的か。
  • 事例は十分か。
  • 体制は見えるか。
  • 導入後の流れは分かるか。

これらが整理されていなければ、どれだけ美しくても「検討材料」としては不十分です。実力のある製造業こそ、言語化しなくても仕事が回ってきた歴史があります。しかしWebは、“黙っていても伝わる世界”ではありません。構造化し、比較可能にし、安心を設計しなければ選ばれません。だからこそ、製造業ほどリニューアルで失敗しやすいのです。問題は技術力ではありません。それを市場目線で翻訳できているかどうかです。

では、どう進めるべきか

誤解してはいけないのは、コンペそのものが悪いわけではないということです。複数社の提案を比較すること自体は、合理的な意思決定の方法です。問題は、戦略がないまま、デザインで選んでしまうこと。ここに本質的なリスクがあります。本来やるべき順番はまったく逆です。

まず決めるべきは「市場」です。どの業界を取りにいくのか。どの工程、どの課題にフォーカスするのか。既存顧客の延長線上を狙うのか、新規市場を開拓するのか。ここが曖昧なままでは、サイトの方向性は定まりません。

次に決めるのが「勝ち筋」です。競合と比較したとき、どの土俵で勝つのか。価格か、技術対応範囲か、短納期か、規格対応か。強みを再定義し、どのポジションで戦うかを明確にします。

そして「KPI」を設定します。問い合わせ件数なのか。資料ダウンロード数なのか。非指名検索からの流入増加なのか。成果指標が定まらなければ、リニューアルは評価できません。

ここまで整理して、初めて制作会社選定です。つまり制作会社に求めるべきなのは、「デザインがうまい会社」ではなく、「この戦略を形にできる会社」です。順番を間違えると、見た目は整っているけれど方向性が曖昧なサイトになります。順番を守れば、戦略を体現する営業装置になります。 製造業のWebリニューアルは、クリエイティブプロジェクトではありません。経営戦略プロジェクトです。だからこそ、

市場 → 勝ち筋 → KPI → 制作会社選定

この順番が、成功と失敗を分けるのです。

まとめ

製造業のWEBリニューアルで失敗する典型的な手順は、「コンペ → デザインで決める」という流れです。見た目のインパクトで判断し、社内の評価は高くなる。しかし半年後、成果は変わらない。これは珍しい話ではありません。

一方、成果につながる順番は明確です。

  1. 戦略
  2. 構造
  3. 導線
  4. デザイン

まず市場を定め、勝ち筋を整理し、検討者が動きやすい導線を設計し、その上でデザインを整える。この順番を守ることで、Webは初めて機能します。Webサイトは「作品」ではありません。24時間働く営業部です。

営業が説明しなくても価値が伝わり、
検討者が比較しやすくなり、
商談の質を高め、
受注確度を上げる。

そこまで設計してこそ、リニューアルは成功と言えます。製造業のWebは、デザインのプロジェクトではありません。営業設計のプロジェクトです。

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