製造業の経営者にとって「受注単価を上げたい」というのは切実な課題です。しかし現実には、競合との価格競争に巻き込まれ、利益を圧迫している企業も少なくありません。
その原因のひとつは、営業力や技術力の不足ではなく、自社の価値を正しく伝えきれていないことにあります。特にホームページは、発注担当者が最初に会社を知る重要な接点であり、その「見せ方」ひとつで受注単価は大きく変わります。
実績・事例の見せ方 ― ストーリー形式で信頼を得る
多くの製造業ホームページには「納入実績」「取引先一覧」が掲載されています。確かに社会的信用を示す材料にはなりますが、それだけでは「なぜこの会社に頼むべきか」は伝わりません。効果的なのは、課題解決のストーリー形式で事例を紹介することです。
①お客様が抱えていた課題 ②自社がどのように提案したか ③解決のプロセス ④実際の成果
この流れで紹介すると、訪問者は「自分の会社でも同じ課題がある」と共感し、「この会社なら解決してくれそうだ」と納得します。単なる価格比較ではなく、「価値」で判断してもらえるようになるのです。
強みを具体的に表現する ― 数字と証拠で差別化
「高精度」「短納期対応」といった言葉は、多くの製造業が使う常套句です。しかし発注側からすれば、「本当に高精度なのか?」「どこまで短納期対応できるのか?」と疑問が残ります。差別化の鍵は、具体的な数値や証拠を提示することです。
•「±0.01mmの精度で加工可能」 •「最短3日で納品可能」 •「耐久年数50年以上」
このように、データや写真、動画で裏付けを示せば、単なるキャッチコピーではなく、説得力のある強みになります。発注担当者は「多少高くても安心して任せられる」と判断しやすくなるのです。
品質・体制の安心感を伝える ― 発注リスクを払拭する
購買や調達の担当者が最も恐れるのは、納期遅延や品質トラブルです。価格が安くても、リスクが高ければ選ばれません。逆に言えば、安心感を与える情報を示すことで、単価を下げずに選ばれる可能性が高まります。
具体的には以下のような要素が有効です。
•最新設備の導入状況 •品質管理体制の明確な説明 •ISOなど各種認証取得の提示 •検査体制や不良率の実績
「安いけれど不安」ではなく「少し高くても安心」という判断を引き出すことが、受注単価を上げる大きなポイントになります。
人を見せる ― 技術者や経営者の顔が信頼をつくる
製造業のホームページは製品や設備の紹介に偏りがちですが、実は人を見せることこそ信頼につながる重要な要素です。
BtoBの取引では「どんな人と一緒に仕事をするのか」が大きな判断材料になります。発注担当者は、技術力だけでなく「信頼できる人に任せたい」と考えるからです。
•経営者の理念やメッセージ •技術者や職人の顔写真、インタビュー •社員の働く姿や社内の雰囲気
これらを見せることで、単なる企業ではなく「人が見える会社」として記憶に残ります。結果的に、他社より高い価格でも「この会社なら任せたい」という意思決定につながります。
まとめ
受注単価を上げるためには、製品や技術力そのものだけでなく、それをどう「見せるか」が極めて重要です。
•課題解決ストーリーで事例を紹介する •数値や証拠で強みを具体的に表現する •品質や体制の安心感を示す •人の顔や理念を見せて信頼を高める
これらをホームページに盛り込むことで、価格競争から脱却し、「価値」で選ばれる会社へとシフトできます。ホームページを単なる会社案内ではなく、受注単価を上げるための営業戦略ツールとして位置づけることが、これからの製造業に求められる取り組みです。